J-HOP 第7回学術・研修大会においてモーニングセミナー2

 H28年5月22日、J-HOP 第7回学術・研修大会においてモーニングセミナー2 認知症ケアの報告をします。セミナーのお手伝いにJ-HOPちばのメンバー冨沢道俊さん、高田泰江さん、佐藤香さんにお願いした。特別ゲストとして寺本仁さんにお願いしてもらい、ディジュリドゥという楽器での生演奏を聴くことが出来た。朝早い時間帯で当初は80名程度の参加を予定していたが、100名近くの参加申し込みがあったようだ。

最初にイギリス生まれの認知症介護の理念のパーソン・センタード・ケアに関して、介護事例の寸劇を用いて認知症の方に対する介護例の悪い例と良い例を示した。パーソンセンタード・ケアの考え方は、本人の性格傾向や生活歴、健康状態や感覚機能等に配慮しつつ、周囲の家族や介護者が適切な認識をもって接することにより、認知症の状態や現れる症状は良くも悪くもなるということだ。認知症という病気を正しく認識するために重要なことは、「認知症は脳の病気である」という認識を捨てて、「認知症は脳の病気というような単純なものではなく、脳以外の多くの要因によってその状態が左右される」という認識をもつことだ。このように、脳以外の要因に注目すると、認知症ケアにおける介護分野の役割がいかに大きいかが明確になる。

 日本においては認知症の人は2025年には700万を突破し5人に1人が認知症と未曾有の状態に直面する。今回は認知症の薬・症状ということではなく認知症へのケア・癒しにについて考えて見ることにした。薬剤師が在宅患者さん宅で行う薬効評価と副作用モニタリングのための薬学的フィジカルアセスメント手法の一つに五感を使ってみるというのがある。これと同じようなものが顔を部分でのケアができるのかを考えてみる。

顔を使ってのケアとして、頭・目・口・鼻・耳について具体的にどのようなことか?

頭の部分に関しては、麻雀やトランプといったゲームをする事で脳の活性化に繋がり認知症の予防にもなると考えられる。目や口に関しては昔懐かしいものに接する事で忘れかけている記憶を思い出させる。嗅覚に関しては、アルツハイマーに置いては物忘れよりも先に嗅覚異常が現れる。今まで好んで食べていたものを急に食べなくなる理由もその一つだ。

嗅神経は他の脳神経より高い再生能力を持っており、適切な香りと効果的な刺激があれば、機能が回復しやすい。そういった意味においてアロマの果たす役割は大きいと感じられる。

聴覚に関しては、人間誰しもひとりひとり思い出の忘れられない曲というものがある。記憶を全て失ったように見えても意識の内側の深いところにある個人的な記憶は生きている。音楽がそれを蘇えさせてくれる。今回はユーカリ油の漂う中、寺本さんの吹くディジュリドゥの音に酔いしれた。

 人間には表の顔、裏の顔という言葉が使われる。誰しも、人間に二面性があることは無意識に感じているところではないか。健常人では表と裏が制御できるが、認知症になると制御できない状態にも陥る。そういった状況もケアしていかねばならない。