エーザイのホームページで紹介されました

一人ひとり患者様の生活パターンからそれぞれに適した寄り添い方を読み解く薬局

フクチ薬局 代表取締役 薬剤師 福地昌之氏 、薬剤師 佐藤香氏

20年以上前から在宅訪問をされているフクチ薬局(千葉市)を訪問し、代表取締役の福地昌之さんと薬剤師の佐藤香さんにインタビューしました。在宅訪問し始めた頃の苦労話と、特に認知症の方への関わり方にフォーカスを当ててお話を伺いました。


―開局までの経緯について教えてください

私が薬学部を卒業した頃は医薬分業も進んでおらず、就職先は病院、製薬会社、行政でした。病院希望だったのですが、今とは違い就職先の空きが無い時代で、退職者が無いと新規採用がありませんでした。慶應義塾大学医学部付属病院で研修生をしながら、ポストが空くことを待ち、千葉県内の病院に就職することが出来ました。しかし、窓口で調剤した薬を渡すだけだったことに疑問を感じ始めた頃、徐々に増えつつある調剤薬局ならば、もう一歩踏み込んだ仕事が出来るのではないかと考え始めました。そんな折にヘッドハンティングの話があり調剤薬局で勤務することになりました。その後平成9年に独立して開局しました。

―在宅訪問への関わりについて教えてください。

勤務薬剤師だった平成7年の頃、在総診を始めたクリニックから在宅訪問をお願いされるようになりました。最近では全国薬剤師・在宅療養支援連絡会(J-HOP)等が設立されネットを通じて気軽に相談できますが、当時は周りの薬局も医薬分業による処方箋調剤を中心に考えている時代で、誰にも相談できず手探りの状態で始めました。行政も初めてのケースだったようで、申請手続きに行っても先方も対応方法が判らないため何度も通うことになりました。在宅訪問も最初のうちは御用聞きのような状況から始まりましたが、その内家庭内に入ってお茶を勧められるようになり、話をゆっくりするようになってから生活パターンが見えるようになってきました。

―在宅訪問に取り組んだ頃、印象に残っていることはありますか?

私の在宅訪問のスタイルが大きく変わったエピソードがあります。ある医師から「名医ってどんな人だと思う?」と聞かれ、「腕が立つ立派な人でしょうか?」と返答すると、「名医とは私たちが決めるのではなく患者が決める事。腕が立たなくても患者のため、真摯に付き添っていれば、患者さんにとって名医になるのではないのかな」と仰ってました。この言葉は今も胸の中に残っております。その後時間は掛かりましたが在宅訪問に対し益々興味を持ち始め、患者さんが訴えることを聴いたり、こちらからアドバイスしたりして、一緒に考えていこうと決めました。

―認知症の方の服薬管理等で工夫されたケースはありますか?

在宅訪問を始めたばかりの独居の患者さんだったのですが、ある日別の薬局から「◯◯さんが、薬が足りないと、うちの薬局に電話が掛かってきました」との連絡が入りました。事情がのみこめず、訪問看護師さんと相談してみると。どうも複数の医療機関に掛かっていることが判りました。ご自宅に伺って薬を見せてもらうと、錠剤は瓶の中に溜め込まれていて、一包化されたものはいくつもの缶の中にとぐろを巻いて保管されていました。しかし、ご本人からは年中薬が無いと電話が掛かってきていたので、訪問看護師さんと相談し、手分けして一週間に2回、お薬カレンダーにセットすることにしました。ところが、夕方になると患者さんがカレンダーからなぜか薬を取り出してしまって元に戻せなくなることが何回かありました。最終的にはヘルパーさんが一回分ずつセットし後は隠すという方法にしました。

もう一人印象的な患者がいらっしゃいます。こちらも独居の方でしたので、日めくり式カレンダーにお薬をセットしてお渡ししましたが、その日めくり式カレンダーから薬を取ってしまいます。そのためヘルパーさんに毎日薬を渡してもらう方法に切り替えましたが、患者さん本人は日めくり式カレンダーからお薬がなくなることを不思議がられましたので、そこには薬の代わりにラムネをセットしておきました。ある日、患者さんが医師に「この薬は大きくて飲みづらい」と訴えられました。医師に服薬管理方法を変えたことをまだ伝えてなかったため、処方薬の粉砕が指示されました。今となっては笑い話ですが、情報共有は大切です。このように試行錯誤しながら認知症の方の服薬管理について他職種連携で取り組んでおります。

―認知症を疑った時はどうされていますか?

医師に打診します。方法としては報告書に記載したり、ケースによっては直接クリニックに行ってお話しをします。薬剤師よりはむしろいつも患者さんのそばにいるヘルパーさんが異変に気づくことも多くあり、ヘルパーさんからケアマネージャーを経由し、私に相談が来ることも多かったです。

―それは薬剤師が医師に提案することを期待されているからと感じましたがいかがですか?

たぶんそうだと思います。現在、服薬支援を3人で行っているのですが、男性の見方と女性の味方では違う点もありました。80歳代の脳出血後遺症の女性の訪問で、佐藤香先生より、「眼振が見られるのだけど薬の副作用でしょうかね?」と質問されて、携帯の動画を見せられ、なるほど振るえていると。私も医師も気づきませんでした。もちろん、その時も服用している薬剤の副作用かと思い医師に相談、血中濃度を見てもらいました。

―佐藤香先生は在宅で工夫されてことありますか?

独居の方の場合はさりげなく冷蔵庫を確認させて頂きます。訪問して関係が出来てきた頃に「今日は何を食べたのですか?」「お水は冷やしていますか?」「どんなお水を飲んでいるの?」という自然な感じで断りを入れます。全く何も入っていないことがあって、場合によっては買い物に付き添うこともあります。一緒に行動することにより、その方の性格や日常生活を掴む事が出来ます。そうすると、その方に合わせた服薬指導が可能となってきます。それ以外にも生活状況や体調を観察していくことにより、会話の幅が広がります。薬だけの話だと話題が乏しくなります。触ったり握手したりするだけでも体温等が判ります。これは川添先生(南国病院 薬剤部長)の受け売りです。触れるとたしかに距離感が近くなっていきます。

―ありがとうございます。


 

福地さん(右端)、佐藤さん(後列左端)とフクチ薬局の皆さん

【患者様視点での感想】

福地さんからのお話を伺っていると、患者さんに寄り添って在宅訪問されていることが伝わってきました。佐藤さんからは女性視点が感じられました。お二人とも薬だけではなく患者様の生活を観察することを重要視されていることが印象的でした。本当に受け持ちの患者様を大切にされていらっしゃいました。

そうだ!福地さん、佐藤さんに聞いてみようと心から思いました。しあわせです。感謝

< インタビュー・構成 久田 邦博(がんサバイバー&薬剤師) >


上記はエーザイ株式会社ホームページに掲載された記事より引用しました。